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To: lwn@lwn.net Subject: Liz's notes on Linus's keynote From: Elizabeth Coolbaugh Date: Tue, 02 Mar 1999 22:45:29 -0700

Linus キーノートスピーチ @LinuxWorld Expo

『Linus: 世界征服は間近だ。そしてそれは最初の一歩に過ぎない。』

reported by Liz ( LWN team )
(Liz のライブメモ。Linus のキーノートスピーチ)

スピーチの前

部屋の外ではキーノートが始まる45分も前から行列ができていました。キーノートのための席を取るため我慢強い人々が長い列を作っているのです。VIP / プレス 用のドアまで待っている人々でスシヅメ状態。始まる数分前まで誰も部屋の中に入ることが許されていませんでした。入れるようになると部屋はすぐ埋まりました。もう一つ広い部屋が用意されていて同時放送されていました。

ちょうど 6時半を過ぎ、まだ席はありましたが人々もまだ増えています。私のところからはオフィシャルの同時放送用カメラに加えて5台のカメラが見えます。ロックミュージックが流れ、ネオンライトが輝いています。全員が Linus の顔を見ることができるように、この部屋の中もスクリーンがあります。プレス用に確保されたセクションにも200人くらいいます。私は Linux Today の Dwight Johnson のおかげで、なんとか最前列の席をとることができました。私達が入ってくる前に Evan Leibovitch もドアの外の群れの中にいました。Leibovitch が関わっている ZDNet の新しい Linux サイト(linux.zdnet.com)は今日から正式公開です。彼は週刊のオピニオンの部分を担当するそうです。

面白かったのは後で流れた噂で、ちゃんと部屋の中を歩いていけるスペースを Linus が要求したということです。つまり、もし私達が部屋に早く入りたかったら入れたんだけど、もしそうしていたら Linus は今日スピーチしてくれなかったとか、、、この Linus のイメージは他の場所で得られるものとは少し違和感が感じられました。

Dwight はぶらぶら歩いてきた後、すべての席が埋まっていて後ろの方は立ち見だと言いました。LinuxWorld は 8,000 から 10,000 人との見積もりを出していますが、どうやら正しいみたいです。おそらくそれだけの人が同時にここにいるわけではなさそうですが。

「Linus を大統領に」とかかれた赤、白、青の風船がいっぱいあります。今日の展示フロアにもいっぱいありました。

※訳注:LinuxWorld Expo に先立ち、LinuxCare のホームページで選挙(のようなもの)が行われていました。その結果、ビルゲイツ氏やゴア副大統領等の並居る強豪を退け、Linus は圧倒的支持率を集め「自由の世界の大統領」に選出されました。その後、フィンランド人を「米国」の大統領に迎えられるよう法律を改正すべきかどうかについての投票も行われていました。

僕は予言者じゃない。この業界には既に十分な数の予言者がいるからね :-) 僕はただ、どこへ行きたいのか、そして、どうすればそこへ行けるのかを知っているだけだ。

I'm not a visionary. This industry has enough visionaries as it is. I just know where I want to go and how to get there.
僕達は絶え間なく多くの開発をやってきた。僕達は他の多くの OS に追い付き、場合によってはそれらを凌ぐまでになった。今では大企業と肩を並べるまでに成長し、彼らは少々怖がっている。

We have had a lot of constant development. We have caught up to and in some cases surpassed many of the other operating systems.It is up there with the big boys and they are nervous.

スピーチの始まり

(ここから警告無くコメントが前後します。Linus や他の方の言ったことは私がタイプできたことに基づいて別の言葉に置き換えられています、、、正確なことはテープを買って聞いて下さい :-)
今、司会の人が Larry Augustin (VA Research の創設者。現社長兼CEO。)を紹介しました。彼は聴衆の多さに驚いて「うわ!しばらく前に僕が参加していた出席者が 15 人くらいの小さい Linux のミーティングを思い出すよ、、、今日いる人の数はよくわからないけど多分それ以上だよね?」とジョークを飛ばしていました。

Larry は LinuxWorld のことを「Linux のカミングアウトパーティーだ、、、そしてうまくいっているみたい」と言っていました。

※訳注:「カミングアウトパーティー」:今まで隠していたけど、実は私、○○なんです、、、という告白の場。

彼はまた「(VA Research の創設者で現社長兼CEOである)僕が(VA Research のトップとして)このコンファレンスで何度も質問されていること、、、『Linux のバッジくれない?』です。」ともコメントしていました。

彼は、Linus と Tove ( Linus の奥様 ) と彼と彼の奥様とで一緒に夕食を食べに行った最初の夜のことを話してくれました。帰りがけに彼の奥様が「へー、彼らって思ったより普通の人達なんだ!」とコメントしたことなど。

彼は話を終えて Linus を紹介しました。「自由な世界のリーダ、Linus Torvalds、、、」そしてもちろん全員起立して拍手喝采、、、

Linus は壇上に上がってきてこう言いました。「落ち着いて、、、僕の話が終わった後も、拍手してもらえるかどうかまだ分かんないんだから。」彼はまた、もし聴衆が彼の話を面白く感じなかったら「後でみんなで一緒にビールを飲みながらその悲しみに浸ろう :-)」とも言いました。

Linus の最初のスライドは謝辞から始まりました。そのことについて彼は「謙遜しようとする完全に無駄な試み」だと言いました。何故なら他の人に感謝すればするほど人々は本当は Linus が頑張ったんだな、と信じるからだそうです。「実はそのために(他の人へと謝辞を述べることを)やってたりするんだけどね、、、:-)」

彼は以下の人々に謝辞を述べました。

  • 開発者
  • テスター
  • インテグレーター
  • 自分にお金をくれる人達 (ありがとう。みじめに暮すのは嫌だからね :-)

僕達はどこから来たのか、、、

現実主義

僕は予言者じゃない。この業界には既に十分な数の予言者がいるからね :-) 僕はただ、どこへ行きたいのか、そして、どうすればそこへ行けるのかを知っているだけだ。道の途中で突っ立っている人は、僕には車にはねられて死んだ動物のように見える。

理想

モラルを持つのは悪くないよ。でも基本的に僕はすごく自分勝手なヤツで、他の人みんなのこととか本当はあまり気にしていないんだ。自分が楽しいことをすることだけが気になっている。

将来

Linus は、何年も前にジョークとして作られた古いスライドを見せました。それには対数のグラフが書かれていて、1996年までに100万人が Linux を使っていると予測※したものでした。それは当時ジョークとして作られたものでしたが、今となっては彼の予測がどれ程正しかったかを示すものになりました。Linux の成長は1年に10の係数とまでは伸びませんでしたが、それをそんなに下回るものではありません。このジョークに対して笑う人は今ではほとんどいません。
※訳注:Red Hat が発表している資料(英語)によれば、1995年末時点の全世界でのLinuxユーザ数は150万人でした。

今やっていること

僕はカーネルに集中している。前の安定バージョンは2年半生き長らえた。そのおかげで今の僕達があるんだ。これには深い意味があるんじゃないか。開発を追い掛けることもできる。新しいカーネルを毎日取ってくることもできるし、安定したシステムを長い間使い続けることもできる。Linux が他のOSと何が違うかというと、2.2 でもこれは成り立つことになると思うけど、古いバージョンでもまだ使いものになっているっていうことだ。アップグレードを強制されない。自分のプログラムを走らせるためだけにアップグレードの終りない迷路に取り付かれたりしないんだ。

僕達は絶え間なく多くの開発をやってきた。僕達は他の多くの OS に追い付き、場合によってはそれらを凌ぐまでになった。今では大企業と肩を並べるまでに成長し、彼らは少々怖がっている。良いことだ。彼らには気を張り詰めていてもらおう。でも彼らを追い払ってはいけない。僕達には競争が必要なんだ。そうすれば、いつも新しい目標が出来るし、サポートするための新しいプラットフォームもあることになる。それが面白くある限り、僕はそれをやるのを楽しむつもりだ。

開発を置いといても Linux の受け入れられ方は驚くばかりだ。多くの人にとってこれは新しい現象だけど、8年間もやってきたから、僕にとってはやっと成長してきたという感じだね。

新カーネル 2.2 は何をしてくれるのか?

オープンソースによる開発は迅速なバグ修正に関して積極的なスケジュールを組む。現在までにも既に 2.2 のために 2つのパッチがリリースされている。Linux がパッチをリリースするのはコストがかからないんだ。なぜならダウンロードされるためにインターネットに載せるだけだからね。だから商業 OS のように差し控える必要なんて全然ない。さらに言えば、パッチを必要としている不具合が自分に関係なかったら最初のリリースのままにしておくこともできる。

スケーラブル SMP の基礎作業

(Linus のスライド)

高性能ファイルシステムインターフェース

  • 完全なマルチプラットフォームのサポート
    …既存のすべての面白いプラットフォームと、そうでもないものと :-)

2.2 は 2〜3 年は生き長らえるとご期待下さい。迅速な開発は続くけど無視してもらって構わない。
僕達は、大抵の OS のパンフレットに載っている、あーだこーだと書かれているものに取り掛かっていく。彼らはいつもそうであるとは限らないけれども、僕達は自分達が約束したことに従うつもりだ。

We'll be working on the yadayadda stuff that you see in any operating systems sales brochures. We'll be following through on what we promise, which they don't always do.
世界征服は間近だ。そしてそれは最初の一歩に過ぎない。

World domination is just around the corner. It's just the first step.

カーネルの将来

2.2 について言えば、まだパックの途中という感じ。安定性は今までのものより良いが一番ではない。多くのアプリケーションにとって Linux は「今はまだ」最良の選択というわけではない。僕達はそれを変えていくことに集中している。僕達は、大抵の OS のパンフレットに載っている、あーだこーだと書かれているものに取り掛かっていく。彼らはいつもそうであるとは限らないけれども、僕達は自分達が約束したことに従うつもりだ。

スケールアップは、いつだってセクシー(派手)だ。マルチ CPU プラットフォームへのスケールアップだとか、スーパーコンピュータへのスケールアップだとかね。スケールダウンはそれほどセクシーじゃない。組み込みプラットフォームとかね。でも同じくらい面白い。僕は個人的にスケールダウンバージョンに集中するつもりだ。あなた方が家に持ってるかも知れない quad-CPU パーソナルステーションとかね :-)

将来的に思っているのは、カーネルはただ受け入れられるだけになるだろうということ。やるべきことは多いし新しいプラットフォームも多い。だけど、もっとも興奮のレベルが高いのはユーザーレベルのプログラムなんだ。僕に仕事が無くなるとは思わないけど、他のプロジェクトがあるいは花形になるかも知れない。

誇大な宣伝には振り回され過ぎないで。僕達は世界を征服したいけど、明日やらなきゃいけないわけじゃない。2〜3日、あるいは 1週間、かかっても、まぁ 2週間くらいならいいでしょう、、、:-)

アプリケション、、、これから多くの新しいプログラムと、うまく行けば多くの新しいユーザが生まれると思う。僕達のソースコードとライセンスで、あなた方は好きなようにシステムを仕立てることができる。多くの人には興味が無いようなシステムにもね。米国の人々には別に便利じゃない言語ローカライゼーションも実際には必要とされているんだ。人々が選択できるよう用意されていて、ノンプロプライエタリ(非独占的)であることが重要なんだ。大抵の人は名の通った会社のソフトウェアを買うかも知れないけど、マイクロコード・アプリケーションが必要なら特別な会社に行くものさ。

それで?

世界征服は間近だ。そしてそれは最初の一歩に過ぎない。

(この時点で、Linus は将来的な質問を想定したスライドを見せて聴衆を笑わせました。例えば「私のペットの犬のマイクロチップに問題があって、、、」)
みんな今は笑ってるけど、Linux の成長だって最初はこれと同じようなジョークだったんだから。

Linus の最後のスライドは同じくらいユーモアが効いていました。聴衆の人数が多すぎて、いつもの彼のインタラクティブな話し方が出来なかったので、最も良く聞かれる質問に対する答えを提示しました。

  • Q. Linus がバスにひかれたりしたらどうなるの?
  • A. 知るわけないじゃん。(ひかれてんだから)

  • Q. ペンギンとどう関係があるの?
  • A. カエルがバドワイザーを売ることができるのに、どうしてペンギンだと不思議なの?

  • Q. ビルゲイツみたいになりたくない?
  • A. ビルって誰のこと?

  • Q. Transmeta (Linus が働いている会社) って何をやっているところ?
  • A. ステキなこと。
最後に、IDG と Linus が $25,000 の IDG Linus Torvalds アワードを発表しました。Jay Salzburger (スペル?) と Stampede ファンデーションとが受賞しました。Jay Salzburger と彼の組織は「ニューヨーク都市部の高校のサーバに Linux をインストールすることでオープンソースの美徳を教授」しました。Linus は Jay に会ったことが無かったそうです。Jay は、ニューヨークには約 1,000の高校があるけれども、それらの内の「たった一つにでも」Linux 以外のものを走らせるなんて正当であると認められないと思うとコメントしました。(Jay は面白い人で「個性派俳優」みたいだと私の後ろにいたプレスの誰かが言っていました。)

Stampede ファンデーションは 現在 VA Research によってホストされている GNU/Linux ディストリビューションです。2.2.1 カーネルと 2.1 glibc を最初に出荷しました。賞金はユーザと開発者とへのサービスを拡充するのに使われるそうです。「みなさん、Michael S. Wood ともう一人(名前が聞き取れませんでした)を拍手でお迎え下さい、、、」Michael は(まったく受賞を予期していなかったのか)「えぇ!スピーチなんて用意してないよ。とりあえず、何人かの人に謝辞を述べさせて下さい、、、(話すことが見つからないので、会の進行を)先に進めて下さい、、」と言っていました。

彼らは二人で次のようなことを述べました。(そのままの言葉ではありませんが)
「私達は、Richard Stallman とフリーソフトウェアファンデーション、それに GNU ユーティリティに関わったすべての方々に感謝致します。すべてのカーネル開発者、すべての Stampede 開発者に感謝致します。 VA Research にも私達のウェブサイトをホストしてもらっています。Stampede Linux に関わったその他すべてのユーザと開発者にも感謝致します。」

次のアワードは8月の LinuxWorld Expo で与えられるそうです。「それでは皆さん、ホール階下のパーティーに席を移しましょう、、、、」

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